情報資産管理どう進める?チームで使える便利ツールも紹介

情報資産管理

顧客情報や会計データ、社内資料など、企業が扱う情報はすべて「情報資産」と呼ばれます。これらの情報が流出したり、誤って消されたりすれば、業務の停止や信頼の損失につながることもあります。

「うちは小規模だし、そこまで大げさに考えなくても…」と思っていませんか?実は、小規模な企業や個人事業者こそ、限られた人員とリソースで業務を回しているため、情報資産をきちんと管理しないと、トラブル時のダメージが非常に大きくなります。

本記事では、情報資産とは何か、小規模事業者が抱えやすい課題、そしてすぐに始められる管理の基本ステップと、役立つツールを登録セキュスペのエイトがご紹介します。

情報資産とは?なぜ管理が必要なのか

「情報資産」とは、会社やチームが業務で使う情報のうち、価値を持つものを指します。たとえば、以下のようなものが該当します。

  • 顧客リスト、請求書、契約書
  • 会計データ、給与情報
  • 商品の設計図、マニュアル
  • 社員の個人情報
  • クラウド上の業務データ

これらの情報が外部に漏れたり、誤って削除されたりすると、ビジネスに大きな支障をきたします。取引先からの信用を失ったり、個人情報保護法などの法的責任が問われたりする可能性もあります。


小規模事業者が情報資産管理で抱えやすい課題

小規模事業者では、情報資産の管理が後回しにされがちです。次のような状況に心当たりはないでしょうか?

  • 情報が誰のパソコンにあるか把握できていない
  • 紙とデジタルの両方で情報が管理されていて、探すのが大変
  • 従業員ごとに保管方法やルールがバラバラ
  • 退職者のアカウントやファイルが残ったままになっている

これらの問題を放置すると、いざというときに対応が遅れ、被害が拡大してしまいます。


情報資産管理の基本ステップ【4ステップ】

情報資産管理は、以下の4つのステップを意識することで、無理なく取り組めます。

ステップ1:情報の洗い出し

まずは、どんな情報を扱っているのかをリストアップします。業務ごとに「何を」「どこに」保存しているかを確認しましょう。

ステップ2:分類・重要度の評価

情報の種類ごとに、「外部公開しても問題ない」「社内限定」「機密情報」といった分類を行い、重要度を判断します。

ステップ1とステップ2はIPA「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」付録7「リスク分析シート」を活用して詳細リスク分析の一環として整理するのがお勧めです。詳細は、「リスク分析シート」説明資料を読んでみてください。

ステップ3:管理ルールの策定

分類した情報ごとに、保存場所・アクセス権限・更新方法などのルールを決めます。紙書類の保管場所、クラウドのアクセス制限も重要です

ステップ4:定期的な見直し

一度決めたルールも、定期的に点検・更新が必要です。特に人の出入りがあった場合は、すぐにアカウントや権限を見直しましょう。


小規模事業者でも導入しやすい情報資産管理ツール紹介

ここでは、情報資産管理に役立つツールを目的別に紹介します。どれも小規模なチームでも導入しやすく、操作もシンプルです。ツールを活用することで、情報の見える化や共有ルールの徹底がしやすくなり、属人化を防げます。チーム全体で効率よく情報を管理・活用できるようになることが、大きなメリットです。

◆ 統合型情報管理

🟩Google Workspace の特徴

  • Gmail、Google ドライブ、ドキュメント、スプレッドシートなどを一体で提供
  • リアルタイムでの同時編集が強み(複数人で同じ文書を共同作業可能)
  • ブラウザ中心の軽量設計で、PC・スマホ・タブレットを問わず利用しやすい
  • 権限管理やファイル共有が直感的で、社内外との情報共有がスムーズ
  • Google Meetやカレンダーなど、コミュニケーション系機能も統合

🟦Microsoft 365 の特徴

  • Word、Excel、PowerPointなどのOffice製品をクラウドでもローカルでも利用可能
  • OneDriveやSharePointでファイル共有・管理ができ、大容量保存にも対応
  • Outlook・Teamsとの連携により、メール・チャット・会議の管理が統合的にできる
  • 業務テンプレート(文書や表など)が豊富で、ビジネスドキュメント作成に強い
  • Active Directoryなどとの連携で、アクセス制御やセキュリティ管理も高度

📊Google Workspace vs Microsoft 365 比較表

比較項目Google WorkspaceMicrosoft 365
主なドキュメントツールGoogle ドキュメント、スプレッドシート、スライドWord、Excel、PowerPoint(Web版・デスクトップ)
リアルタイム共同編集◎(同時編集・変更の即時反映)◎(Web版はリアルタイム編集可)
ファイル保存先Google ドライブOneDrive、SharePoint
フォルダ共有・管理◎(フォルダ単位での共有・権限管理が直感的)◎(共有や管理はやや複雑だが柔軟性あり)
アクセス権限の細かさ○(閲覧・コメント・編集の3段階)◎(詳細な共有設定とユーザー別制御が可能)
共有リンクの発行◎(権限付きURLを簡単に生成)◎(リンク発行+有効期限・パスワード設定も可能)
オフライン編集対応△(Chrome拡張など設定が必要)◎(デスクトップアプリでフル機能使用可)
バージョン管理(履歴)◎(文書ごとの変更履歴が残る)◎(OneDriveやアプリ内でバージョン履歴確認可能)
コメント・提案モード◎(コメント・提案モードが便利)◎(Word/Excelのコメント・変更履歴機能)
外部ユーザーとの共有◎(Googleアカウントなしでも限定共有可)○(Microsoftアカウントが必要な場合も)
検索機能◎(Googleの検索技術が強力)○(ファイル名や中身検索も可能)
スマホ対応アプリ◎(Docs, Sheets, Driveなど専用アプリあり)◎(Word, Excel, OneDriveなど高機能)
セキュリティ・管理機能◎(2段階認証、ドメイン制御、DLPなど)◎(条件付きアクセス、暗号化、DLPなど)
プラン例(ビジネス向け)Business Starter(¥800/月〜)Microsoft 365 Business Basic(¥899/月〜)

どちらを選ぶべき?

簡単に言うとMicrosoft365は企業で多く使われており、取引先や関係会社とのやり取りが多い場合はMicrosoft365を選択し、個人事業主などであまり他事業者とのやりとりがない場合はGoogle Workspaceがよいと思います。その他の判断基準は以下の表を参考にしてください。

利用スタイルおすすめ
手軽に共有・共同編集したい(ブラウザ中心)🟩Google Workspace
オフライン作業・Officeソフト重視🟦Microsoft 365
多機能・細かな権限管理が必要🟦Microsoft 365
スマホでも使いたい+操作がシンプルな方が良い🟩Google Workspace

◆ 情報の整理・可視化

🟩Notion(ノーション)の特徴

  • 自由度が非常に高く、情報を「ページ+ブロック単位」で整理可能
  • データベース機能を使えば、台帳やタスク一覧も柔軟に作成可能
  • Web・アプリでリアルタイム共有/共同編集ができ、チーム作業に強い
  • 日本語対応済み・テンプレートも豊富で、初心者でも始めやすい

🟪esa.io(エサドットアイオー)の特徴

  • 「ドキュメントは育てるもの」という思想に基づいた設計(WIP=下書き運用がしやすい
  • Markdown記法対応で、エンジニアや技術職のチームに人気
  • カテゴリ分けやタグ機能で、情報の整理・検索が簡単
  • 日本製サービスでUIやヘルプが完全日本語対応・親しみやすい

🟦Microsoft OneNoteの特徴

  • ノートブック→セクション→ページという構造で、視覚的に整理しやすい
  • 手書き・テキスト・画像・音声など多様な形式に対応
  • Microsoft 365との連携がスムーズ(OutlookやTeamsとの連動も可)
  • 無料でも利用でき、日本語UI・アプリも充実していて導入しやすい

📊Notion / esa.io / Microsoft OneNote 比較表

比較項目Notionesa.ioMicrosoft OneNote
主な用途ドキュメント+データベース+タスク管理技術文書・ナレッジ共有(チーム向け)メモ・ノート・資料整理
情報の構造化◎(ページ、データベース、階層化が柔軟)○(カテゴリ・タグで整理)△(セクションとページによる分類)
可視化の柔軟性◎(表、カンバン、カレンダーなどに切り替え可)△(マークダウン+シンプルUI)△(視覚的ノート、画像貼り付けなどが中心)
検索機能◎(全文検索、フィルター、タグ)◎(検索・フィルター精度が高い)○(検索は可能だが速度はやや劣る)
共同編集◎(リアルタイム編集・コメント・@メンション)○(マークダウン形式で投稿型)○(共有可能・編集はやや同期にタイムラグあり)
タグ機能◎(プロパティとして管理可能)◎(タグでの分類が基本)△(分類はノートブックとセクション中心)
情報の階層化◎(ネスト可能。多階層の管理がしやすい)○(タグ・カテゴリで管理)△(階層は2~3段階まで)
対応フォーマットテキスト、画像、ファイル、ToDo、コード、DBなどテキスト(Markdown)中心テキスト、画像、手書き、音声など多様
テンプレートの豊富さ◎(公式・ユーザー作成多数)△(基本的には自作)○(基本テンプレあり)
Markdown対応◎(ネイティブまたは近い動作)◎(Markdownベース)△(一部のみ対応)
スマホ・アプリ対応◎(アプリでもほぼ同等機能)○(Web中心・スマホ対応はやや弱い)◎(モバイルアプリ高機能)
データの外部連携○(APIや外部ツール連携も進化中)△(限定的)○(Office製品と連携可能)
利用価格(目安)無料〜(プラス:\1650/月〜)チーム利用は¥500/人・月〜無料(Microsoft 365と連携すると強力)
対象ユーザー個人・チーム・企業(多用途)技術チーム・開発者向け個人・教育機関・ビジネス利用全般

どれを選ぶべき?

まずは、無料のOneNoteから始めましょう、Microsoft365を使っているのであれば相性は抜群です。そして、利用用途によりNotion や esa.ioの導入を検討するのがよいと思います。

利用スタイルおすすめツール
ドキュメントもデータも一元管理したい🟩Notion
技術情報を整理・共有したい(特に開発チーム)🟪esa.io
メモやアイデアを手軽に記録・整理したい🟦Microsoft OneNote

◆ 機器やライセンスの資産管理

🟦 ManageEngine AssetExplorerの特徴

  • IT資産管理ツールとして、社内のパソコンや周辺機器、ソフトウェアのライセンスなどを一元管理できます。
  • 自動スキャンによって機器を検出し、台帳の作成やライセンスの管理、監査レポートの出力まで対応。
  • インストール型とクラウド型の両方に対応し、日本語UIと公式マニュアルが完備されているため、安心して導入できます。
  • 初期導入は無料トライアルで試すことができます。

🟩 スプレッドシート+QRコード運用の特徴

  • コストをかけずに始めたい場合に最適です。
  • 資産(例:PC、プリンタ、ルーターなど)にQRコードを貼り、スキャンすると該当情報を記録したのスプレッドシート(GoogleスプレッドシートやExcel Onlineなど)にアクセスできます。
  • 管理項目は自由にカスタマイズでき、メンバー全員でリアルタイム共有・編集が可能。
  • 手作業中心ですが、小規模な組織には非常に実用的です。

📊ManageEngine AssetExplorer/ スプレッドシート+QRコード運用 比較表

項目ManageEngine AssetExplorerスプレッドシート+QRコード運用
対応言語(UI・サポート)◎ 日本語対応(公式サポートあり)◎ 日本語対応(Google公式+解説多数)
導入コスト△ 一部有料$15~(無料トライアルあり)◎ 完全無料
機能◎ 高度なIT資産・ライセンス管理◯ シンプルな一覧・台帳管理
自動スキャン(ネットワーク機器)◎ 対応× 手動登録
カスタマイズ性◯ 標準機能+一部調整可能◎ 高い(完全自由設計)
運用の手軽さ△ 導入に少し準備が必要◎ すぐに開始できる
スマホからの利用◯ モバイル対応◎ Google Sheetsアプリ+QRで簡単アクセス

どちらを選ぶべき?

機器やライセンスなどの情報資産を管理するには、「ManageEngine AssetExplorer」のような専用ツールと、「スプレッドシート+QRコード運用」のような手軽な方法があります。

どちらが最適かは、「どこまで自動化したいか」「どれだけの情報を扱うか」「ITにどれくらい慣れているか」で変わります。以下の比較表で、自分たちの業務に合った運用方法を見つけましょう。

利用スタイル・目的おすすめツール
台帳を本格的に整備したい/IT資産の数が多い🟦 ManageEngine AssetExplorer
まずは無料&手軽に始めたい/管理対象が少ない🟩 スプレッドシート+QR運用
社内のITスキルに不安がある/誰でも更新できる仕組みにしたい🟩 スプレッドシート+QR運用
将来的に業務システムと連携したい/セキュリティを強化したい🟦 ManageEngine AssetExplorer
費用は最小限に抑えたい/他の業務ツールと連携しない🟩 スプレッドシート+QR運用

情報資産管理を成功させるためのポイント

小規模事業者が情報資産をしっかり守るには、「完璧を目指さず、継続可能な仕組みを作ること」が大切です。

  • 最初からすべて整備しようとせず、できることから一歩ずつ始める
  • チーム全体で「なぜ管理が必要か」を共有し、共通認識を持つ
  • 担当者を明確にして、ルールに基づいた運用を定着させる
  • トラブルが起きたときに備えて、バックアップと対応フローも準備する

まとめ

情報資産の管理は、今やすべての事業者に求められる重要な課題です。特に小規模な事業者にとっては、ひとたび情報が失われれば業務そのものが止まってしまうことも。

とはいえ、難しく考える必要はありません。基本のルールを決め、チームで共有し、ツールを上手に使うことで、無理なく安全な運用が可能になります。

まずは「どんな情報があるのか」を洗い出すことから始めてみましょう。そして、今日からできる管理・共有の方法を少しずつ整えていくことが、将来のリスクを大きく減らす第一歩になります。

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