小規模事業者でも、顧客情報や契約書、業務ノウハウなど、守るべき情報資産は数多くあります。
そして、それらを「どこに」「どのように」保存・共有するかが、情報漏えいや業務トラブルのリスクを大きく左右します。
Google Workspace(旧:G Suite)は、チームで使える便利なクラウドツールとして広く知られていますが、実は情報資産を安全に扱うための強力な管理機能も備えています。
この記事では、Google Workspaceを使って情報資産をどのように「共有」し、誰に「権限」を与え、どう「バックアップ」して守るかを、登録セキュスペのエイトがわかりやすく解説します。
無料版と有料版の違いを知ろう(情報資産管理の観点から)
まず最初に押さえておきたいのは、無料のGoogleアカウント(Gmail)と有料のGoogle Workspaceには明確な機能差があるという点です。
特に、複数人で情報を扱う小規模事業者にとっては、有料版の導入がほぼ必須といえます。
🔸主な違い(情報資産管理に関係する部分)
項目 | 無料版(個人向け) | 有料版(Google Workspace) |
---|---|---|
ユーザー・アカウント管理 | ×(個人単位) | ◯(管理者が一元管理) |
共有ドライブ(チーム単位) | × | ◯(Business Standard以上) |
外部共有の制御 | × | ◯(ドメイン外共有制限など) |
編集履歴・監査ログ | 一部のみ(簡易) | ◯(詳細な記録、検索機能) |
情報保全(Vault等) | × | ◯(Business Plus以上) |
※Google Workspaceの詳細なプランについては公式サイトをご確認ください。
Google 無料アカウント範囲のセキュリティ関係機能については、「個人向け」記事であらためて解説予定です。
情報を整理する:Driveと共有ドライブの活用
情報資産を管理するには、まず「どこに・何を・どんなルールで」保存するかを決めることが重要です。
Google Workspaceでは、共有ドライブを使ってチームでの整理・保管が効率的に行えます。
整理のポイント:
- フォルダ単位で情報の種類別に分類(例:契約書/顧客データ/経理資料など)
- ドライブ内で色分けや「スター」マークを活用して優先度を可視化
- マイドライブに私的ファイル、共有ドライブに組織資産を保管するルール化
共有ドライブのメリット:メンバー交代があってもファイルが残る・誤って削除されにくい
安全に共有する:アクセス権限と共有ルールの運用
ファイルの共有は便利な一方、情報漏えいのリスクもあります。
Google Workspaceなら、管理者が共有方法をコントロールでき、社外共有や誤操作を防ぐことができます。
共有制御の具体例:
- ユーザー単位で「閲覧・コメント・編集」権限を割り当て可能
- 管理者が「外部共有を禁止」「ダウンロードを制限」などの設定を組織全体に適用できる
- 誤送信を防ぐため、ファイル送信前に「レビュー者を指定する」などのルール整備も有効
編集履歴を記録・管理する:DocsやSheetsの履歴機能
Googleドキュメントやスプレッドシートでは、自動で「変更履歴」が保存されます。
これはトラブル防止や監査対応において大きな力を発揮します。
活用方法:
- バージョン履歴で過去の状態に戻す(誤操作時の復旧)
- 提案モードを使って修正を確認しながら進める(承認フロー代替として有効)
- 管理者は誰がいつ何を変更したかのログを確認できる(Business Standard以上)
データをバックアップ・保護する:削除・漏洩リスクへの対策
日々使うファイルほど、うっかり削除や漏洩リスクがあります。
Google Workspaceでは、これらのリスクにも備えた仕組みがあります。
対策ポイント:
- ごみ箱からの復元は最大30日以内なら可能(自動削除前に注意喚起ルールを)
- ローカルに定期的にバックアップするルール(ただし、共有ファイルとの重複管理に注意)
- Vault機能により、証跡・アーカイブ保存が可能(※Business Plus以上)
管理者としてやるべきこと:最低限の運用ルールを整える
安全な情報資産管理には、ツールの機能だけでなく日々の運用ルールが不可欠です。
管理者は、以下のような基本方針をチームと共有しましょう。
最低限やっておきたいこと:
- アカウントの発行・削除を一元管理し、退職者のアクセス遮断を徹底
- モバイル端末の紛失リスクに備えて、画面ロックや遠隔初期化を有効に
- 「共有時はフォルダ単位でなくファイル単位にする」などのルールを作り、習慣化を図る
まとめ
Google Workspaceは、単なる業務効率化ツールではなく、情報資産を守るための統合プラットフォームとしても非常に優れています。
とくに、小規模事業者が「メンバー間の連携」と「情報の安全な共有・管理・バックアップ」を両立させるには、有料版の導入と適切な設定・ルール運用がカギとなります。
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